多肉植物はそのぷっくりとした形と、鮮やかな色合いから人気の観葉植物です。
園芸が趣味という人は、多肉植物も自分の手でも株分けして増やしてみたい、と考える人も多いのではないでしょうか?実は多肉植物は方法さえ知っていれば、自分でも簡単に増やすことができます。
今回は、多肉植物を自分で増やす方法についてお話していきます。失敗しないためのコツや必要な道具についても詳しく紹介するので、この記事を最後まで読めば初心者でも多肉植物を増やせるようになります。
多肉植物は初心者でも簡単に増やせる
植物を自分で増やそうと思ったとき、専門的な知識や広大な設備が必要になることもあります。
しかし、多肉植物の繁殖には特別な知識や設備は必要ありません。多肉植物は交配以外の方法でも増やすことができ、しかも他の種類の植物と比較するとその難易度が低く、方法さえ知っておけば初心者でも挑戦可能です。
また、数が増えるとさまざまな種類の多肉植物を集めて、寄せ植えもできるようになります。自分で数を増やして、思い通りのレイアウトにできるのも、多肉植物が人気の観葉植物である理由です。
多肉植物を増やすときに必要なグッズ
実際に多肉植物を増やして行く前に、いくつかの道具を用意しておきます。
- はさみ
- 土入れ・スコップ
- ピンセット
- 多肉植物専用の土
- 鉢
- バット
- 新聞紙
園芸や観葉植物を育てるのが趣味という人はすでに持っているものもあるかもしれませんが、直前になって慌てないように事前にしっかりと確認しておきましょう。なかには多肉植物でしか使わないようなものもあります。ここからは、それぞれの用途についてお話していきます。
はさみ
葉挿しや茎挿し用の枝葉を切るために使用します。また、株分けの際に根を分断するのにも使うことがあります。古いものや切れ味の悪いものを使用してしまうと、植物の繊維を潰してしまい、うまく増やせないこともあるので手入れされているもの、清潔なものを使用しましょう。
土入れ・スコップ
土入れやスコップは鉢やバットに土を入れるのに使用します。ハサミで分離した枝葉や根は新たに盛った土に植え替えて育てます。多肉植物の植え替えで使うスコップは、細かな作業もできる小さめのものがおすすめです。
ピンセット
他の植物の植え替えではあまり使う機会のないピンセットも、多肉植物を増やす際には必要です。多肉植物から切り取った枝葉は非常に小さく、手袋をした指ではつまみにくいので、ピンセットがあると便利です。
多肉植物専用の土
切り分けた枝葉を挿す土は、多肉植物専用の土が良いでしょう。多肉植物は葉に水分を蓄えるため、水はけの良い専用の土でないと根腐れを起こすこともあります。ホームセンターや園芸店、ネットショップなどで購入できます。
鉢
新たに増やした多肉植物を飾る鉢は、好みのものを選びます。園芸用の鉢でなくても、インテリアと調和するものや、マグカップなどでも大丈夫です。特にブリキのバケツなどは、多肉植物を育てる上で定番の鉢ですね。
バット
作業しやすいようにバットも用意します。道具や土、切り分けた枝葉や根を入れるのに使います。必要なものがすぐに手に取れるようになり、あるのとないのとでは作業の効率が違ってきます。誤って道具や植物を踏まないようにするためにも、バットを使ってまとめておきましょう。
新聞紙
作業する場所を汚さないために、床に敷く新聞紙も用意しておきましょう。特にベランダや屋内で作業する際は、地味ながらも必須のアイテムです。
多肉植物を増やす時期は「成長期」
多肉植物を増やす作業は、その種類の「成長期」に行います。
多肉植物は、一年の間に活発に成長する「成長期」と、成長をお休みする「休眠期」、ゆっくりと成長していく「緩慢期」の3つの時期を繰り返します。また、これらの期間が訪れるタイミングは多肉植物の種類によって変わり「春秋型」「夏型」「冬型」の3つのタイプに分けられます。
休眠期に増やそうとしても、多肉植物は活動をお休みしている時期なので、うまく増やすことができません。多肉植物を増やすのであれば、成長期に作業を行いましょう。
春秋型
春や秋の穏やかな気候で成長する多肉植物のタイプです。人間が過ごしやすいと感じる気温で活動するので、初心者でも育てやすいのが特徴です。バラの花のような葉をもつエケベリアや、ぷっくりとした葉がいくつも重なっているセダムなども春秋型の多肉植物です。
成長期…3〜5月、10〜11月
緩慢期…6月、9月、12月、2月
休眠期…7〜8月、12〜2月
主な品種…セダム、エケベリア(春秋型)、パキフィツム、カランコエ、クラッスラ(春秋型)
夏型
夏の暖かな時期に成長する多肉植物のタイプです。休眠期の冬には水も必要としないので与えてしまうと根腐れする危険性があります。また、暑すぎても活動を休止するのも特徴です。クラッスラやカランコエが夏型の多肉植物の代表格ですが、アロエやサボテンも夏型に分類されます。
成長期…4〜6月、9〜10月
緩慢期…3月、11月
休眠期…7〜8月、12月〜2月
主な品種…カランコエ、ユーフォルビア、コチレドン(夏型)、クラッスラ(夏型)、ガステリア
冬型
多肉植物は暖かな場所で育つイメージがありますが、冬型のものは冷涼な気温を好みます。夏の暑い時期に活動を休止しますが、かといって寒すぎても良くないので冬場でも室内で育てます。プレイオスピロスやアエオニウムなどは、個性的なルックスで人気の高い冬型の多肉植物です。
成長期…11〜12月、2〜3月
緩慢期…1月、4月、10月
休眠期…5〜9月
主な品種…アエオニウム、リトープス、コノフィツム、クラッスラ(冬型)、フォーカリア、チタノプシス
多肉植物の増やし方は3つ
多肉植物の増やし方には大きく3つの方法があり、ひとつは多肉植物の根を分離させて行う「株分け」です。
株分けは、園芸に慣れている人であれば、植物の増やし方として最初に思い浮かぶ方法かもしれません。
しかし、多肉植物はもっと簡単に増やすこともでき、その方法が「葉挿し」と「茎挿し」です。
茎挿しはバラなどの増やし方で聞いたことがあるという人もいるかもしれませんが、葉挿しはあまり耳馴染みがないのではないでしょうか。
多肉植物の原種の多くは、南米やアフリカの乾燥した土の上で育つため生命力が強く、葉からも増えることができるのです。
葉挿し
葉挿しは多肉植物の増やし方として、最も手軽な方法です。
多肉植物は切断された葉から繁殖できる、変わった性質を持っています。多肉植物のぷっくりとした葉には多くの水分と栄養が蓄えられていることから、葉挿しができると考えられています。
また、元気な葉であれば自然に落ちたものや、葉の途中から切れてしまったものからも葉挿しができることもあります。葉挿しがうまくいくと、切断された葉から発根する様子をみられるので、多肉植物愛好家にとって人気の繁殖方法です。
挿し木
挿し木はバラやいちごの繁殖手段として用いられますが、多肉植物でも可能です。根のついていない茎を土に埋めることで茎から発根します。
植物の種類によって挿し木の難易度は変わりますが、多肉植物の挿し木は、比較的難易度が低く初心者でも成功させることができます。
セダムやクラッスラなど茎が地面から露出しているもので行います。
株分け
交配以外の植物の繁殖方法としては、ひとつの植物を根から分断する株分けが最もポピュラーな方法です。多肉植物でも株分けは可能で、エケベリアなど茎立ちしていないロゼット状の多肉植物を増やしたい時に行います。
多肉植物が大きくなってきたときに植え替えと一緒に株分けも行うと、効率よく多肉植物を増やせるでしょう。
多肉植物を「葉挿し」で増やす方法
葉挿しは、現在育てている多肉植物の葉を切り取って行いますが、不意に取れてしまった葉も利用できる場合があります。多肉植物の葉挿しは非常に簡単ですが、失敗しないためのコツについても紹介していきます。
葉挿しのやり方
- まずは葉を用意します。葉と茎の付け根の部分を手、もしくははさみを使って切断します。
- バットに多肉植物用の土を盛り、その上に切断した葉をいくつか並べます。この時に水は与えません。
- 室内の風通しの良いところに置き、種類によって差はありますが、だいたい1週間から2週間たつと葉の根本から小さな芽と一緒に発根します。
- 1カ月から2カ月ほどたち、芽が大きくなってきたら鉢にうつし、根の部分を埋めます。1年ほどたつと親株と同じほどの大きさに成長します。
葉挿しを失敗しないコツ
葉挿しを行う際にはいくつか注意するポイントがあります。
- なるべく葉の根元から葉を切断する
→途中から切断するよりも発根しやすくなります。手でもぎる場合は、乾燥している状態だと行いやすいので葉挿しの前は水やりを控えます。 - 葉を土に並べている時には水やりをしない
→腐る可能性があります。水やりは鉢に植え替えてから行い、その後は2週間〜1カ月に1回の頻度。 - 自然に落ちた葉からも発根する場合がある
→落ちた葉は捨てずに大切にとっておきましょう。
葉挿しで増やすのにおすすめの多肉植物
早めに発根、発芽する種類 | 遅めに発根、発芽する種類 |
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早めに発根する種類は、比較的早めに結果が目に見えるので初心者におすすめです。じっくり葉挿しを楽しみたいという人は、遅めに発根するタイプの多肉植物を選びます。
多肉植物を「挿し木」で増やす方法
他の植物では難易度が高い挿し木も、多肉植物では比較的簡単に成功させられます。多肉植物が伸びすぎて、見た目が悪くなってきた時におすすめの方法です。
挿し木のやり方
- 挿し木に使う茎を用意しましょう。この時必ずはさみを使い、上から3〜5cmほどの木化した白い部分を切ります。徒長を切り取って利用すると、親株の見た目もよくなります。
- 次に切り取った茎を乾燥させます。寝かしておくと葉が上を向いてきてしまうので、ビンの口や試験管、ペットボトルなどを利用して上向きに立つように工夫します。
- 季節や種類によって異なりますが、2週間から1カ月ほどで茎から発根します。
- 鉢に植え替え、ここで初めて水やりをします。その後は2週間から1カ月の頻度で水やりを行います。
挿し木を失敗しないコツ
挿し木を成功させるためのコツを紹介します。
- 挿し木はいま育てている多肉植物を整える時におすすめ
→見た目を整えつつ、数を増やすことができます。 - 切り取った茎は十分に乾燥させる
→一度切り口を乾燥させてふさぎます。切り取ってすぐに水やりをしてしまうと、腐ってしまう可能性があります。 - 鉢に植える時は割り箸などで穴を開けておく
→先に穴を開けておきそこに差し込むようにすると、多肉植物を傷めません。
挿し木で増やすのにおすすめの多肉植物
挿し木に向いている多肉植物 |
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この他、葉が大きく茎の目立つ種類の多肉植物で挿し木はおすすめです。
多肉植物を「株分け」で増やす方法
株分けは今ある多肉植物の根を分離させ増やす方法です。株分けは多肉植物が大きくなりすぎた時や、元気がない時に役立つ増やし方です。
株分けのやり方
- 新聞紙を敷き、多肉植物を鉢から抜き取ります。根と茎の付け根を持って、もう片方の手で鉢を持って優しく行います。
- 次に土を8割ほど落として根を解きます。十分に乾燥している状態で行います。
- 親株と子株を切り分けていきます。手でほぐれる場合もありますが、難しければはさみを使って切り分けます。
- 鉢に多肉植物用の土を入れ、子株を植え替えます。すぐに水やりをせず、1〜2週間後に水やりを行います。
株分けを失敗しないコツ
株分けは多肉植物の根に触れるため慎重に行います。
- 土と鉢の間にピンセットを差し込んでから抜き取る
→多肉植物を鉢から抜き取りやすくなります。 - 株分け前の1カ月は断水する
→乾燥させ根を解しやすくします。十分に乾燥していないと根がちぎれる恐れがあります。 - 切り口が大きい場合、1日乾燥させて植え替える
→切ったばかりの根は、例えるなら傷ができたばかりの状態です。乾燥させて傷をふさいでから作業を行います。
株分けで増やすのにおすすめの多肉植物
株分けに向いている多肉植物 |
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この他にも、子株のできる多肉植物は株分けで増やすのに向いています。
まとめ:多肉植物を増やして寄せ植えにチャレンジ
ここまで多肉植物を増やす3つの方法を紹介してきました。
他の植物と比べて、多肉植物は簡単に増やせ、続けて行けばたくさんの多肉植物をひとつの鉢に植える「寄せ植え」にも挑戦できるようになります。たくさんの多肉植物を集め、世界にひとつだけの鉢を作れるようになると、多肉植物を育てることがもっと楽しくなるはずです。
いつかは寄せ植えに挑戦したいと思っている人は、まずは多肉植物を増やすことから始めてみてはいかがでしょうか。
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