アフリカ南部や中南米など乾燥した地域で育ち、葉に水をため込む性質を持った多肉植物。その個性的な見た目からインテリアとしても人気の高い観葉植物です。今回は多肉植物の寄せ植えの作り方と、おしゃれに飾るためのコツ、長く楽しむための管理方法について紹介していきます。
多肉植物の寄せ植えはおしゃれなインテリアに
多肉植物はぷっくりとした見た目で、インテリアとしてお部屋に彩りを与えてくれます。その愛らしい見た目から単体でも人気がありますが、多数の種類を同じ鉢にまとめて飾る寄せ植えをすると、さらに華やかになります。また、たくさんの種類を並べたいと思った時に、複数の鉢をおく必要もないので、限られたスペースに複数の植物を飾ることができます。
寄せ植えは基本的な方法さえ知っておけば、誰でも作成可能です。さまざまな多肉植物を自由に組み合わせられるので、自分だけの組み合わせを楽しんでみましょう。
多肉植物の寄せ植えのポイントは「組み合わせ」
多肉植物の寄せ植えは、自由に組み合わせて作ってみても構いませんが、基本的な組み合わせのポイントを抑えておくと、植物にとってストレスのない環境で育てることができます。管理もしやすくなり、見た目もよい状態を長く保てます。そのためには、同じ鉢に植える植物の「生育期」をそろえてあげることが大切です。
生育期が同じ組み合わせにする
分類 | 主な多肉植物 |
---|---|
春秋型 | セダム、エケベリア(春秋型)、ハオルシア、センペルビウム、ペペロミア、クラッスラ(春秋型) |
夏型 | アロエ、アガベ、サンセベリア、クラッスラ(夏型)、カランコエ |
冬型 | リトープス、コノフィツム、アルギロデルマ、アエオニウム、オトンナ |
初心者は「春秋型」の寄せ植えがおすすめ
初めて多肉植物を寄せ植えするという人には「春秋型」の組み合わせがおすすめです。春秋型の多肉植物は日本の一部の地域やヨーロッパにも自生しており、育成の適温は10〜20℃と人が過ごしやすいと感じる気温を好みます。そのため、屋内での育成に適しており、お部屋のインテリアとして取り込みやすいのが特徴です。夏型、冬型のものは温度管理にコツが必要なので、初めての人は春秋型で組み合わせると手間も減らせます。それでは代表的な春秋型の多肉植物を紹介していきます。
セダム
【ベンケイソウ科マンネングサ属】
「セダム」は日本でも自生している品種もあり、お手入れも簡単で育てやすい多肉植物のひとつです。ぷっくりとした小さな葉がいくつも集まっており、種類によって形や色も変わります。バリエーションが豊富なので、さまざまな種類のセダムだけをを集めて寄せ植えもできる人気の多肉植物です。
エケベリア
【ベンケイソウ科エケベリア属】
「エケベリア」はバラの花のような華やかな見た目の多肉植物です。中南米やメキシコで自生し、日本でも多様な品種が生まれています。見た目の繊細さとは裏腹に、丈夫で育てやすいのが特徴ですが、多肉植物を寄せ植えする際はできるならば生育期に行いましょう。湿気の多い梅雨時期や夏期、休眠期の植え替えは根を痛める原因になります。
ハオルシア
【アロエ科ハオルチア属】
「ハオルシア」はハオルチアとも呼ばれる南アフリカ原産の多肉植物で、品種によって大きく形も変わります。昔はアロエの一属と考えられていましたが、小型であること、葉が短いことなどのさまざまな違いから現在はハオルチア属に分類されています。透明な葉先をもつオブツーサが特に人気の品種です。ハオルシアは葉がしおしおになってから水やりをします。そのため、寄せ植えする際には、水やりのタイミングに注意しましょう。
多肉植物の寄せ植えに必要なもの
多肉植物を寄せ植えする際には、植物自体はもちろん他にも準備するものがあります。
- 好きな多肉植物
- 土
- 肥料
- 鉢
- 寄せ植えに必要な道具
などが、最低限必要です。いざ多肉植物を植え替えるというタイミングで慌てないように、事前に準備しておきましょう。いずれもホームセンターや園芸店で購入できるものばかりなので、誰でも簡単に用意ができるでしょう。ただし、用意する際には気をつけたい点もあるので、それぞれ具体的に説明していきます。
好きな多肉植物
まずは寄せ植えに使う多肉植物を植えたいサイズに合わせて3〜7株ほど選びましょう。基本的には好きなものを選んで構いませんが、先にも説明した通り、同じ鉢に飾るものは同じ生育タイプの多肉植物を選ぶようにしましょう。異なった生育タイプの多肉植物を同じ鉢に植えてしまうと、水や肥料を与えるタイミングがバラバラになり管理が難しくなります。多肉植物を、美しく保つためにも生育タイプをそろえましょう。また、取れてしまった葉やカットしたものも装飾として利用できます。
土
多肉植物の寄せ植えの際に使用する土は、ホームセンターや園芸店などで販売している多肉植物専用の土を使用しましょう。また、鉢の底には鉢底ネットとその上に水はけをよくするための鉢底石をおきましょう。葉に多くの水分を蓄える多肉植物は、土に水分をため込みすぎると根腐れを起こし、せっかくの美しい葉がブヨブヨした状態になってしまいます。同様の理由で受け皿を用意する場合は、水やり後に皿にたまった水は処分してあげましょう。
肥料
多肉植物は、砂漠や岩場などの水分や栄養の少ない土地に生えているため、本来はあまり肥料を必要としません。しかし、屋内の観賞用として育てる場合は肥料をあげた方が大きく美しくなります。多肉植物に肥料を与える際は、ホームセンターなどで販売している、多肉植物用の肥料を使用します。また、寄せ植えのタイミングには液体の肥料よりも固形肥料を土に混ぜるのが手軽でおすすめです。植え替え同様、肥料は休眠期には与えないようにしましょう。
鉢
多肉植物は種類によってサイズもさまざまです。寄せ植えが初めてなのであれば、小さな品種が3〜5株ほど植えられる2号鉢(直径6cm程)もおすすめです。さらに多くの種類を寄せ植えしたいのであれば、鉢のサイズを大きくしましょう。鉢選びにルールはないのでバケツタイプのものや、箱型のものなどインテリアを優先しても構いません。多肉植物の寄せ植えは、葉が密集するほど美しく見えるので、鉢を選ぶ時は気持ち小さめのサイズを選ぶと良いでしょう。
寄せ植えに必要な道具
寄せ植えの作業には基本的な園芸用品も必要です。例えば、スコップや土入れ、鉢底ネット、ジョーロなど持っていない場合は、その他の道具と一緒に購入しておきましょう。多肉植物が大きくなった時の、植え替えのタイミングでも使用するので無駄になることがありません。また、多肉植物の寄せ植えは小さな鉢に植えることもあるので、植物を傷つけないためにピンセットがあると便利です。スプーンやフォークも細かい部分の土を整えるのに役立ちます。作業場所によっては床を汚さないための新聞紙など敷くものも必要です。
多肉植物の寄せ植えの作り方
多肉植物の寄せ植えのポイントを学び、必要な道具が用意できたらいよいよ寄せ植えを行っていきます。寄せ植えの際にも、いくつか細かなルールがあります。何度かお伝えしている通り、休眠期の植え替えは根腐れなどの仕方のない場合を除いておすすめしません。春秋型の多肉植物であれば7月〜8月と11月〜2月、夏型は11月〜2月、冬型は6月〜8月の時期を避けて作業を行ってください。以上を前提として、具体的な作業の流れを説明していきます。
1.寄せ植え前は水やりを控える
まず、寄せ植えを行う1週間前から、水やりは控えるようにしましょう。土に水分が残っていると多肉植物を土から抜いたときに根をほぐしにくくなり、作業中に根を痛めてしまう原因になります。また、植え替え後も1週間ほどは水を与えないようにします。植え替え後、すぐに水を与えてしまうと根が十分に水分を吸収できず、根腐れを起こしてしまう可能性があります。株が落ち着いたら、様子を見ながら水やりを再開し、徐々に元の頻度に戻していきましょう。
2.多肉植物の根を軽くほぐして小分けにする
多肉植物を寄せ植えする際、抜いた株の根をすぐに植え替えてしまうと、根腐れを起こすこともあります。そのため、根を軽く解した後にトレーなどに小分けして2〜3日寝かして置いて乾燥させてあげましょう。こうすることで、根腐れを防ぐことができます。他の植物の植え替えにはないポイントなので、しっかり押さえておきましょう。
3.鉢に鉢底ネットと土を入れる
次に、鉢に鉢底ネットをセットしましょう。鉢の大きさに合わせて鉢底ネットをカットし、鉢の底のサイズに合わせます。その後、水はけをよくするための鉢底石をネットの上におき、その上に多肉植物用の土を鉢の3分目ほどまで盛っていきましょう。稀に鉢の底に段ボールを入れる人がいますが、段ボールは水分をため込みやすくカビの原因になります。必ず、鉢底ネットを使用しましょう。
4.メインの多肉植物を植える
いよいよ、多肉植物たちを植えていきます。先ほど3分目まで盛った土の上に先ずはメインとなる多肉植物を配置していきます。最初にメインの多肉植物を選ぶことで、まとまりのあるデザインになります。配置も鉢のサイズと一緒に植える多肉植物の数によって色々と試してみましょう。植える場所が決まったら、片手で多肉植物をもち、もう片方の手で土を盛っていきます。スプーンやフォークを使うと、細かな部分にも土を盛りやすくなります。
5.細かい多肉植物を配置する
メインの多肉植物を設置したら、飾りになる細かな多肉植物を設置していきましょう。細かい作業になるので、ピンセットがあると丁寧にまとめられます。ピンセットを使って、鉢のふちと、メインの多肉植物の隙間を埋めるように設置するとキレイに並べることができます。多肉植物の種類によっては、上から押し込んでしまうと折れてしまうこともあるので、ピンセットで小さめの穴を掘ってからその上に乗せてあげると良いでしょう。以上で、多肉植物の寄せ植えが完了です。
多肉植物の寄せ植えで失敗しないコツ
多肉植物の寄せ植えはその種類の多様さから難しく思われることもありますが、守るべきルールをしっかり押さえておけば誰でも簡単にかわいい寄せ植えを作ることができます。
失敗しないために必要なことをまとめます。
- 同じ生育期の種類を植える
- 休眠期には行わない
- 寄せ植え前1週間は水を与えない
- 土から抜いて2〜3日寝かせて乾燥させる
- メインの多肉植物から植え小さなもので隙間を埋める
- 完成後1週間は水を与えない
以上のことを守って、自分だけの組み合わせを見つけておしゃれな寄せ植えを作ってください。
多肉植物の寄せ植えをおしゃれにするアイデア
ここからは、一歩踏み込んで多肉植物の寄せ植えをもっとおしゃれに彩るアイデアを紹介していきます。ただ好きな多肉植物を寄せ植えするだけでも、十分におしゃれになりますがちょっとしたコツを知っておくことで、他とは違った自分だけの作品になります。
同系色でまとめる
多肉植物を寄せ植えする際、おしゃれに見せようと思ったら基本的には同系色のものを選んでまとめると良いでしょう。多肉植物はさまざまなカラーが存在しており、例えばレッド系やイエロー系などの華やかな色でまとめると、お部屋が明るくになるでしょう。グリーン系やブルー系などの落ち着いた配色でまとめると、他のインテリアを邪魔しない落ち着いた印象になります。反対に、さまざまな色を全て取り込んでみてもインスタ映えするようなおしゃれな寄せ植えが完成します。
中心を高くブーケ状にレイアウトする
小さな多肉植物や、取れた葉っぱ、徒長の切った先などを利用することで、まるでブーケのような寄せ植えを作ることもできます。
セダム属などの多肉植物を何種類か集め、先端の高さを合わせるように一つにまとめます。まとめたものを盛った土の上にそのまま入れ、盛り上がってしまった部分をピンセットで土に埋め込み、反対に足りない部分を取れた葉っぱなどで補います。最後に鉢の縁などの隙間に土を入れてピンセットなどで土を固めて完成です。
器にこだわる
多肉植物の寄せ植えは、小さな器はもちろん、園芸用の鉢以外にもさまざまな器が使用できます。
- マグカップや湯飲み
- 小さなブリキのバケツ
- ますなど四角形のもの
- 竹筒
- ジャムの瓶
- 空き缶
などなど、さまざまなアイテムを利用して飾ることができる自由度の高さも多肉植物が人気の理由です。
また、これらの器を鉢として利用する際は、底をくり抜いてあげると通気性もよくなり、多肉植物を健康な状態に保つことができます。竹筒や小さなブリキのバケツなどは比較的加工も簡単なので入門用におすすめの器です。
まとめ
多肉植物の寄せ植えのポイントと実際の作り方、そして上手に飾るためのアイデアをお伝えしてきました。多肉植物は、その人気の高さから日本でも品種改良が進み、種類もどんどん増え続けています。さまざまな種類の植物をおしゃれに飾ることのできる寄せ植えは、多肉植物の飾り方としてぴったりの方法です。インテリアとしても最適なので、ぜひ今回ご紹介したポイントとコツを押さえて、世界に一つだけの寄せ植えを作ってみてください。
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