ここ数年は多肉植物がブームになっています。園芸店だけでなく、100均などでもたくさんの多肉植物が売られています。手軽なインテリアとして人気の多肉植物ですが、初心者向けの多肉植物がどれなのか、どうやって育てていけばいいのか不安な人もいますよね。初心者でもわかる多肉植物の種類や育て方についてまとめてみました。
多肉植物ってどんな植物?
多肉植物は北アフリカや南アフリカなどの乾燥した地域に多く生息している植物です。丸くぷっくりとした葉を持つセダム類や、すらっと伸びた葉が特徴的なアガベなど豊富な種類があります。園芸店などでの取り扱いが一般的ですが、最近では100均でもセダム類やエケベリアを中心にいろんな多肉植物を見かけます。中にはレアな品種もあるので、気になっている種類があるときはこまめに通って探してみるのも楽しいですね。
一般的な植物と比べると乾燥に強く、水やりも少なくて済むなど育てやすいイメージの多肉植物。見た目もオシャレなものが多く、育て方も比較的簡単なため初心者にもおすすめです。
多肉植物は乾燥に強い
元々乾燥した地域に生息している多肉植物は、乾燥に強く丈夫です。厚みのある丸い葉っぱや茎には水分をたくわえることができます。また多肉植物の葉の表面は角皮(かくひ)という丈夫な膜で覆われていて、水分の蒸発を防いでくれています。多肉植物は過酷な地域に生息する植物として、独自の進化を遂げました。見た目の可愛さと、生物としてのたくましさが多肉植物の魅力のひとつです。水やりの頻度が少ないので、忙しい人でも育てやすく、コツをつかめばほとんど枯らすことなく長く楽しめます。
サボテンも多肉植物の仲間
濃い緑色の葉に、鋭い棘がたくさんついているサボテン。実はサボテンも多肉植物の仲間です。多肉植物は世界各地に生息している一方で、サボテンはメキシコなど南北アメリカにしか生息していません。見た目にも違いがあり、サボテンには棘座(どげざ)がありますが、多肉植物にはありません。園芸店などでは多肉植物とサボテンは別物として陳列されています。サボテンは多肉植物の中でも種類が多く「サボテン科」として分類されているからです。
多肉植物には3つの生活型がある
多肉植物には、春夏型、秋型、冬型といった種類があります。これらの種類は、成長期や休眠期などが異なっています。多肉植物の成長期には、それぞれ適した光量や温度、水分を与える必要があります。成長期と休眠期をうまく乗り越えていくと、大きく丈夫な株に育てることができます。初心者ほど、購入した多肉植物の成長期がいつなのかを知るのは、枯らさずにうまく育てる大切なポイントと言えるでしょう。
春秋型
成長期 | 3月から5月ごろ、9月から11月ごろ |
置き場所 | 春、秋 :日光がよく入り風通しのよい場所 夏 :風通しのよい明るい日陰 冬 :日光が入る窓際など |
水やり | 春、秋 :1〜2日に一度 夏、冬 :ほとんど水やりはしない |
主な種類 | セダム、エケベリアなど |
春秋型の多肉植物は種類がとても多く、成長期が一年に2回くるので育てる楽しみを味わいたい人におすすめです。特にセダム類は成長期にどんどん増やすことができます。
夏型
成長期 | 6月から8月 |
置き場所 | 春、秋 :日光がよく入り風通しのよい場所 夏 :明るい日陰 冬 :日光が入る窓際など |
水やり | 夏 :1〜2日に一度 春、秋 :土が乾いてからたっぷりと 冬 :ほとんど水やりはしない |
主な種類 | ハオルシア、アロエなど |
夏型の多肉植物は日光を好み、6月から8月にかけて成長期を迎えます。春秋型に比べると成長スピードはゆっくりとしています。真夏にベランダなどの外で育てることも可能ですが、過度な日光は葉や茎を傷めてしまう、湿度で株が根腐れしてしまうといったトラブルが起きがちです。明るい日陰で適度に風通しの良いところがおすすめです。
冬型
成長期 | 11月から翌年の2月ごろ |
置き場所 | 春、秋 :日光がよく入り風通しのよい場所 夏 :明るい室内 冬 :厳冬期は室内、暖かい日は日光浴も |
水やり | 春、秋 :土が乾いてから根腐れしない程度に 夏 :ほとんど水やりはしない 冬 :土が乾いてからたっぷりと |
主な種類 | リトープス、コノフィツムなど |
冬型の多肉植物は、11月から翌年の2月までの冬に成長期を迎えます。成長期には、十分な光を与え、室内で育てる場合には蒸れてしまわないように、湿度と温度を管理することが大切です。冬型の多肉植物には変わった形のリトープス、丸く可愛いコノフィツムなどがあります。
多肉植物が初心者に人気の理由
多肉植物は、植物に虫がつくのが苦手、一人暮らしを機に家に植物を置きたいという人など、今まで植物を育てたことがない「園芸初心者」にとても人気です。一体どのような理由で人気なのでしょうか。
代表的な3つをまとめてみました。
多肉植物は手間がかからず育てやすい
多肉植物が初心者に人気の理由のひとつは、手がかからないことです。多肉植物は、乾燥した地域出身の種類が多く、他の植物と比べて乾燥に強い種が大半です。成長期以外は水やりの頻度は少なく、手間がかかりません。初めて植物を育てる人の中には水やりを忘れたり、水やりのタイミングがわからなかったりと苦手意識を持つ人もいるでしょう。多肉植物は水やりの頻度が少なく、失敗しにくい点も人気の理由です。
室内でも育てられる
多肉植物は一般的に乾燥に強く、種類によっては直射日光を好まないため、室内でも窓辺を中心に育てることが可能です。可愛いシルエット、かっこいいフォルムなど、形も様々な多肉植物は、マンションや一軒家でも、手軽に育てることができる室内のインテリアグリーンとして人気です。また樹木のように大きくならないものが多いので、省スペースでたくさんの種類を育てることができます。
寄せ植えがかわいい
多肉植物は、小さな苗同士を寄せ植えするアレンジ方法もあります。寄せ植えは複数の種類を一度に楽しむことができます。多肉植物の種類をうまく組み合わせていけば、背の高さや葉の色による違いから、まるでフラワーアレンジメントのような可愛い鉢になるでしょう。寄せ植えは多肉植物たちを美しく、自由にアレンジできます。寄せ植えに適しているセダムやクラッスラ、カランコエなどの種類を中心にアレンジすると、まとまった作品をつくることができます。
多肉植物の育て方の基本とコツ
多肉植物を育ててみたい!と思った方。特に、今まで植物をあまり育てていない初心者の方も「多肉植物なら育ててみたい」とウズウズしますよね。基本とコツがいくつかありますが、どれも簡単なことです。
日当たりに気をつけて置き場所を決める
多肉植物は、日光に当たるのが大好きです。日光が足りなくなると徒長(とちょう)と言って間延びした感じの育ち方をしてしまいます。日光は好きですが、直射日光に当てすぎると葉焼けしたり蒸れて枯れてしまうこともあります。室内で育てる場合は窓辺や日当たりの良い場所に置くなど、直射日光を避けつつ明るい場所で育てます。ベランダなど屋外で管理する場合は、日光の強さや気温によって場所を変えてあげましょう。一度にたくさんの多肉植物を育てるなら、成長期ごとに分けて、適切な日光、水やりができるようにしておくと管理がしやすくなります。
風通しと湿気に注意
多肉植物は湿度の低い地域に生息しているので、乾燥気味に育てるのがセオリー。とはいえ、水を一切与えないのではなく、成長期には充分な量の水を与えましょう。多肉植物は多湿な環境では根腐れすることがあります。風通しがあり、湿度が低い場所で生育するのが良いでしょう。
水やりのタイミングと回数が大切
多肉植物は成長期以外は水やりは少なめにするのがコツ。成長期であっても、鉢の表面の土がしっかり乾燥してからたっぷり与えましょう。特に冬場は春秋型、夏型は「水切り」と言って水を一切与えない方が、根腐れや多肉植物が溶けてしまうという悲劇を避けることができます。セダム類やエケベリアなどいくつかの種類では、水切りがうまくいくと葉が紅葉し、ほんのりとした赤みからピンクになります。あまり知られていませんが、多肉植物の紅葉は鮮やかで美しく、目を楽しませてくれるでしょう。
成長したら植え替えも必要
多肉植物は成長が早いため、成長期に植え替えを行うのが一般的です。成長期にひと回り大きな鉢に植え替えることでどんどん大きくなります。鉢底から根っこが見えてきた、鉢が小さくなってきた、などが植え替えサインです。 成長期以外でも、鉢が小さくなってきたり、根詰まりが起こった場合には植え替えを行いましょう。
鉢は通気性のよいテラコッタなどがおすすめです。多肉植物の個性的な見た目に合わせて、コンクリート系のカッコいい鉢も良いでしょう。その場合は水はけのよい土を使うなどして、多肉植物が蒸れないように気をつける必要があります。
ホームセンター、園芸店などでは多肉植物用の土が売られています。基本的に水はけのよいタイプの土を選びましょう。また、植え替え時は鉢底ネットや鉢底石を使ってしっかりと水はけがよくなるようにします。
初心者におすすめの育てやすい多肉植物
初心者が多肉植物を育てるにはどのような種類のものを選べば良いのでしょうか。成長期の型に合わせて初心者でも育てやすい種類をまとめてみました。特にセダム、エケベリアは非常に種類が豊富です。お気に入りを見つける楽しみも、多肉植物を育てる醍醐味です。
セダム(春秋型)
肉厚で柔らかい葉が特徴的で、成長期には花や実をつける品種もあります。セダムは非常に種類が多く、葉挿しや株分で増やすこともできます。品種によっては秋に紅葉するものもあり、季節を通して楽しむことができるでしょう。セダムは風通しの良い明るい日陰を好みます。湿度が高い場所では蒸れてしまい根腐れを起こすことも。水やりは成長期は1〜2日に一度、成長期以外は土がしっかり乾いてから、冬の休眠期は水切りをしましょう。
エケベリア(春秋型)
エケベリアはおしゃれな見た目と丈夫さから人気の多肉植物です。バラのような形の葉っぱがとても可愛く、100均などでもよく売られています。エケベリアが育つのは、日当たり、風通しの良い場所です。水やりは乾燥してからたっぷり目に。冬場は水切りといって水をほとんど与えない育て方をしましょう。根っこから水を吸い上げる力のない冬は、少量の水分でも株に負担がかかります。エケベリアは葉挿しで増やすことができます。成長期に切り取った健康な葉を土にしておくと、根が出てきて新しい株が育ち始めます。
ハオルシア(春秋型)
南アフリカ原産の多肉植物で、非常に種類が豊富です。固く尖った葉をもつ種類もあれば、陽に透ける幻想的な葉をもつ種類もあります。透明度の高いハオルシアは見ているとため息が出るほど美しいと言われています。ハオルシアは比較的花も咲きやすく、一年を通して楽しませてくれます。水分が多いタイプのハオルシアは直射日光に弱いため、真夏は不織布を被せたり日陰に置くなどして直射日光が当たらないようにしましょう。ハオルシアは大きくなれば株分けで増やすことができます。
センペルビウム(春秋型)
肉厚の葉がロゼット状に広がり、華やかな雰囲気のセンペルビウム。種類が豊富で、葉の色は赤や茶色、ピンク、緑などがあります。春と秋に成長する春秋型で、親株の周りに子株が出てくるのが特徴。子株はそのまま近くの土に根をはり成長していきます。育て方、増やし方ともにとても簡単で、初心者の方におすすめです。置き場所は直射日光の当たらない明るい日陰、水やりは土の表面が乾いたらたっぷりとあげましょう。
カランコエ(夏型)
カランコエは種類も豊富で花も楽しめる品種です。肉厚で丸みのある葉っぱにふわふわとした細かい毛でおおわれている月兎耳(つきとじ)、スマートで直線的な葉の子宝草など葉の形もたくさんあります。特にうさぎの耳のような月兎耳(つきとじ)は見た目も可愛くて100均で売られていることも。水やりは土の表面が乾いたらたっぷりとあげましょう。直射日光を浴びると葉焼けすることがあるので、置き場所は明るい日陰がおすすめです。
アガベ(夏型)
アガベは夏型の多肉植物で、暑さに強いという特徴を持ちます。迫力のある葉、爪のようなトゲがついている葉など、ワイルドなイメージが強く、アガベのみを育てる愛好家もいます。置き場所は日光が当たる明るい日向で、寒さ暑さに強いことから初心者にもおすすめです。乾燥した環境を好むため、水やりは控えめにしましょう。
クラッスラ(冬型)
クラッスラは非常に種類の多い多肉植物で、タワーのようにすらっと上に伸びるタイプのものや、細い枝のような葉茎を持つもの、肉厚でどっしりとしたものなどがあります。葉の色も赤みを帯びたものから緑色のもの、黒っぽいものと多種多様です。色鮮やかで背が高く特徴的な形が多いことから、寄せ植えでアクセントになります。クラッスラの冬型は耐寒性があり、寒さに強く丈夫です。100均でも出会える種類のものも多く、入手しやすい多肉植物です。置き場所は日当たり、風通しの良い場所。水やりの頻度は少なめを好みます。
リトープス(冬型)
リトープスは「生きた宝石」とも呼ばれるユニークな形状の多肉植物です。大きな特徴として、ひらべったい二つの葉茎が隙間なく対照的に生えている、成長期には葉の中心から新しい葉が出てきて脱皮する、というものが挙げられます。リトープスの生息地は南アフリカなどの乾燥地帯で、岩の割れ目などにある小石に混じって生えています。特徴的な外見はそこからきているのではないかと言われています。置き場所は明るい日陰で、冬場の寒さにも耐えてくれますが0度を下回る気温の場合は室内に入れてあげましょう。水やりは乾燥気味にして、成長期には土がしっかり乾いたら水をあげます。
まとめ
多肉植物は園芸初心者の方で育てやすい植物です。樹木のように大きくならず、小さい鉢で育てることも可能で、ベランダ園芸や室内のインテリアグリーンにも向いています。最近ではレアな品種も100均で見かけるようになったり、多肉植物を専門的に扱う園芸店も増えてきていて、気に入った種類を探す楽しみもあります。
多肉植物は生命力が強いので、園芸初心者でも株分けや葉挿しで増やすことができます。直射日光、水やりに気をつければ、何年も育てることができるので愛着も湧くでしょう。自分好みの寄せ植えを作ったり、いろんな品種を集めたりと楽しみ方もたくさんあります。多肉植物の世界に一歩足を踏み入れてみませんか?
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